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最終更新: (「贈与税の時効6年・7年は何のことか」「お金を出した人の口座へ戻す方法」「使ってしまった場合を整理する3つの軸」「名義預金と判定されないための条件」「税務署はどうやって把握するのか」「相続財産に加えたときの相続税額の概算」を追加。国税庁資料にもとづく既存の解説内容と、その出典の取得日〈2026年7月23日〉に変更はありません。今回追加した期間制限の記述は、e-Gov法令検索で2026年8月1日に確認した条文にもとづきます。あわせて同日、公開前の点検により2点を訂正しました——①偽りその他不正の行為があった場合に7年となる根拠条文の記載を、相続税法37条4項へ改めました(従前の記載は誤りでした。7年という期間そのものに変更はありません) ②申告漏れ相続財産の構成比について、内訳が特定されない「その他」が43.3%で最も大きく、現金・預貯金等は29.1%であることを明記(従来は現金・預貯金等が最大と読める記述でした)。国税庁の公表資料・令和7年4月1日現在法令等に基づく)
名義預金の解消方法——時効はある?「使ってしまった」場合の考え方
結論から言うと、名義預金は「使い切る」「時効を待つ」といった方法で相続税の対象から外れるわけではありません。そもそも名義預金は、名義人への贈与が成立しておらず、実質的に亡くなった方(被相続人)の財産のままの状態です。正しい解消とは、名義を実質に合わせること——つまり、生前に実体のある贈与をきちんと成立させて記録を残すか、実質どおり相続財産として申告するか、のどちらかです。この記事では、名義預金の正しい解消方法と、多くの人が気にする「時効」「10年前の口座」「使ってしまった」場合の考え方を、国税庁の資料にもとづいて整理します。本ページは、税負担を不当に逃れる方法や、財産を隠す方法を説明するものではありません。
まず前提——名義預金は「隠す」「使い切る」で解決しない
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人(原資の負担者)が違う預金のことで、名義が家族でも、実質的に亡くなった方の財産と認められるものは相続税の課税対象になります(名義預金とは)。ここで大切なのは、「渡し方」や「使い方」を変えても、それが実質的に誰の財産かという事実は変わらないということです。名義を家族にしたまま放置しても、口座のお金を引き出しても、実質が亡くなった方の財産であれば、相続のときに相続財産として扱われます。
したがって、名義預金の「解消」とは、財産を見えなくすることではありません。名義と実質のズレを、正しい手続きで解消しておくことです。放置すると、相続のときに相続人が「これは誰の財産か」を説明できず、かえって手続きが複雑になります。
出典: 国税庁「相続税の申告の誤りやすい事例⑥(被相続人以外の名義の財産・預貯金)」/ タックスアンサー No.4105(相続税がかかる財産)。取得日2026-07-23。
名義預金に「時効」はある?——10年・20年経っても外れない理由
「贈与税には時効があると聞いた。名義預金も一定の年数が経てば相続税の対象から外れるのでは?」という疑問はよくあります。結論は「外れない」です。理由は、名義預金の性質にあります。
いわゆる「贈与税の時効」は、実際に贈与が成立していることが前提の話です。ところが名義預金は、名義を家族に変えただけで、あげる・もらうの合意(贈与)が成立していない状態を指します。贈与が成立していない以上、そこに贈与税の課税関係はそもそも生じておらず、「贈与税の時効」を待つという発想自体があてはまりません。実質は最初から最後まで亡くなった方の財産であり、相続のときに相続財産として相続税の対象になります。
「贈与税の時効は6年」と聞いたのは何のこと?
「時効」として語られているものの正体は、税務署が課税処分(更正・決定)をできる期間の制限です。贈与税については、申告書の提出期限から6年を経過する日まで(相続税法37条1項)、偽りその他不正の行為によって税を免れた場合は7年を経過する日まで(相続税法37条4項)と定められています。ここが「贈与税の時効は6年、悪質なら7年」と説明されている部分です。
混同されやすいのですが、この6年・7年は「贈与が成立していて、本来は贈与税を申告すべきだった」場合に意味を持つ期間です。名義預金は贈与そのものが成立していない状態を指すため、申告すべき贈与税がそもそも発生しておらず、6年が過ぎても預金が名義人のものに変わるわけではありません。贈与税の話が終わっても、相続税の話は残る——これが「名義預金に時効はない」と言われる理由です。
出典: e-Gov法令検索「相続税法」第37条第1項(贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則=6年)・同条第4項(偽りその他不正の行為=7年)。取得日2026-08-01。個別の事案でどの期間が適用されるかは事情により異なるため、税理士・税務署にご確認ください。
10年前・20年前に作った口座はどうなる?
同じ理由で、「口座を作ってから10年前・20年前だから、もう時効で自分のもの」とはなりません。年数の経過ではなく、原資・管理・贈与の成立といった実質で判断されるためです(判定の詳細は名義預金とは・判定チェックリスト)。過去に作った口座であっても、実質が亡くなった方の財産なら、相続財産として申告に含める必要があります。
たとえば、10年前に親が子ども名義で作った定期預金が、いまも親が通帳と印鑑を持ったまま自動継続されている——というケースでは、問われるのは「10年経ったかどうか」ではなく、「そのお金を誰が出し、誰が管理してきたか」です。逆に、10年前の時点で子どもが通帳を受け取り、自分の判断で使ってきたのであれば、その口座は年数と関係なく子ども自身の財産と整理できる可能性があります。年数は判断材料の一つにすぎず、それ単独で結論を決めるものではありません。
出典: 国税庁「誤りやすい事例⑥」/ タックスアンサー No.4402(贈与税がかかる場合=贈与は当事者の合意で成立)。取得日2026-07-23。時効・除斥期間の具体的な取扱いは個別事情により異なるため、税理士・税務署にご確認ください。
名義預金を解消する方法は3つ——贈与を成立させ直す・出した人へ戻す・相続財産として申告する
名義預金を正しく解消する方向は、大きく3つです。名義人のものにしたいのか、もとの持ち主に戻したいのか、それとも相続で整理するのか——どれを選ぶかで手順が変わります。共通しているのは、いずれも記録を残すことがポイントになる点です。
なお、亡くなった後にできるのは3番目だけです。1と2は生前にしかできないため、迷っている段階で先送りにすると選択肢が減ります。
方法1: 生前に「実体のある贈与」を成立させる
名義人のものにしたいなら、名義を変えるだけでなく、本当の意味で贈与を成立させる必要があります。ポイントは次のとおりです。
- あげる人ともらう人が合意する — 贈与は当事者の合意で成立します。もらう人が「もらった」と認識していることが大切です。
- もらう人が自分で管理・使用できる状態にする — 通帳・印鑑・キャッシュカードをもらう人自身が持ち、自由に使える状態にします。あげた人が管理し続けていると、名義預金のままと扱われがちです。
- 記録を残す — 贈与契約書を作り、手渡しではなく銀行振込にすると、いつ・いくら・誰から誰へ渡したかが記録に残ります。
- 110万円を超えるなら贈与税を申告する — 1年間にもらった贈与の合計が110万円を超える場合は、翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告が必要です(国税庁 No.4402・No.4429)。
正しい贈与のやり方は生前贈与のやり方・贈与契約書の書き方、非課税の枠は生前贈与の非課税枠で解説しています。
方法2: お金を出した人の口座へ戻す(親に返す)
「贈与するつもりはなかった。もとの持ち主に戻したい」という場合は、名義預金を解約して、原資を出した人(多くは親)の口座へ振り戻すという進め方もあります。名義と実質のズレそのものを消す方法です。
- 戻す前に、本当に名義預金なのかを確かめる — 原資・管理・贈与の成立を整理します。過去に有効な贈与が成立していた場合、そのお金を親へ戻す行為は、今度は名義人から親への贈与と評価される可能性があります。順番を逆にしないことが大切です。
- 定期預金は解約の条件を確認する — 満期前に解約すると、約定の利率ではなく中途解約利率が適用され、受け取れる利息が減ることがあります。手続きには、金融機関によって名義人本人の本人確認書類や届出印を求められることがあります。
- 現金化せず、口座間の振替で戻す — 手渡しにすると「いつ・いくら戻したか」が記録に残りません。振込・振替なら通帳に履歴が残ります。
- 経緯をメモに残す — 「名義を借りていただけで、実質は本人の資金だったため戻した」という経緯を、日付・金額とともに書き残しておくと、後日の説明がしやすくなります。
ただし、戻したこと自体が過去の事実を書き換えるわけではありません。相続が起きたときには、戻す前の期間もふくめて「そのお金が誰のものだったか」が見られます。この方法を選ぶかどうかは、生前贈与として成立させ直す(方法1)ほうが家族の希望に合うかどうかとあわせて考えることになるため、動く前に税理士・税務署に確認してください。
方法3: 実質どおり相続財産として申告する
すでに亡くなっている、あるいは実質が亡くなった方の財産のままである場合は、名義預金を相続財産に含めて相続税を申告するのが正しい取扱いです。名義が家族でも、実質が亡くなった方の財産なら、相続税の対象として申告に含めます。含めるべきか迷うときは、①原資・②管理運用・③贈与の成立を整理したうえで、相続に強い税理士や税務署に相談してください。
出典: 国税庁 No.4402(贈与税がかかる場合)・No.4429(贈与税の申告と納税=申告期限は翌年2月1日〜3月15日)/「誤りやすい事例⑥」。取得日2026-07-23。
「使ってしまった」場合はどうなる?
名義預金の口座から、すでにお金を引き出して使ってしまったというケースもあります。この場合の考え方は、「誰が、どういう立場で使ったか」で分かれます。
- 名義人が生前から自分の判断で自由に使っていた場合 — そもそも名義人が自分の財産として管理・使用していたのなら、名義預金ではなく、名義人自身の財産だった可能性があります。
- 亡くなった方の管理のもとでお金を動かしただけの場合 — 実質が亡くなった方の財産であれば、口座から引き出して別の形に変えても、相続財産として扱われる可能性があります。使ってしまったことで課税が消えるわけではありません。
軸1: いつ使ったか——亡くなる前か、亡くなった後か
亡くなった後に引き出して使った場合、その預金は相続が始まった時点では残っていたことになります。したがって、実質が亡くなった方の財産であれば、使ったかどうかにかかわらず、相続開始時点の残高を相続財産に含めて申告するのが原則です。使ってしまったことで相続財産から消えるわけではありません。
ここでもう一つ注意したいのが、相続放棄を考えている場合です。相続財産の全部または一部を処分すると、民法921条により単純承認をしたものとみなされ、相続放棄が認められなくなることがあります。名義預金だと思っていた口座のお金を使うことが「処分」にあたるかどうかは事情により判断が分かれ得るため、放棄の可能性が少しでもあるなら、動く前に確認してください(相続放棄ができない・認められないのはどんなとき)。なお相続放棄ができるかどうかは税金ではなく法律の問題のため、確認先は税理士や税務署ではなく、弁護士・司法書士、または手続きを行う家庭裁判所になります。
亡くなる前に使った場合は、上に書いたとおり「誰の判断で使ったか」で分かれます。
軸2: 何に使ったか
- 亡くなった方自身の入院費・介護費・生活費に充てた — 実質の持ち主が自分のために使った、という整理になり得ます。領収書や請求書が残っていれば、使途の説明がしやすくなります。
- 名義人が自分の生活費・買い物に使った — 名義人が生前から自分の判断で自由に使えていたのか、その都度あげる側の了解が必要だったのかで、見え方が変わります。
- 名義人からさらに別の人へ渡した — 実質が亡くなった方の財産だった場合と、いったん贈与が成立していた場合とで扱いが変わり得るため、お金の流れを時系列で整理する必要があります。
軸3: すでに解約済みで、通帳も手元にない場合
「その口座はもう解約済みで、通帳も残っていない」という状況もあります。ただし、解約しても金融機関には取引の記録が残ります。相続の手続きでは、残高証明書や取引履歴(入出金明細)を金融機関から取り寄せて財産を確定させるのが通常の流れで、家族が把握していなかった口座や、解約済みの口座の資金の動きも、この過程で見えてきます(預貯金の相続手続き)。手元に通帳が無いことは、記録が無いことを意味しません。
使ってしまった分を、後から口座に戻せば元どおりになる?
後から同じ額を入金しても、過去に「いつ・いくら・誰が動かしたか」という事実そのものが消えるわけではありません。むしろ、辻褄を合わせるための入金が、あとから経緯の説明を難しくすることもあります。やるべきことは戻すことではなく、いつ・いくら・何に使ったのかを書き出して、相続財産に含める金額を確定できる状態にすることです。そのうえで税理士・税務署に相談すれば、話は早く進みます。
いずれにしても、「使い切れば相続税がかからない」という考え方は誤りです。実質が亡くなった方の財産であるものを、意図的に隠したり、少なく申告したりすると、本来の税金に加えて加算税などがかかることがあります。心当たりがあるときは、隠すのではなく、事実を整理して税理士・税務署に相談するのが確実です。
出典: 国税庁 No.4429(贈与税の申告と納税=加算税)/「誤りやすい事例⑥」。取得日2026-07-23。取扱いは個別事情により異なります。
名義預金と判定されないための条件——「贈与が成立している」と言える状態
ここまでは「すでにある名義預金をどうするか」の話でした。これから家族名義で口座を作る、あるいは毎年少しずつ渡していきたいという場合は、はじめから名義預金と見られない形にしておくのが確実です。名義預金にならない、とは言い換えれば贈与がきちんと成立しているということです。次の点が確認の目安になります。
| 確認する点 | 名義預金と見られやすい状態 | 贈与が成立していると言いやすい状態 |
|---|---|---|
| 通帳・印鑑・カード | あげた側(親)が持っている | もらった側(子)が自分で持っている |
| もらう人の認識 | 口座があること自体を知らない | もらったことを知っていて、合意がある |
| 使える状態か | あげた側の了解がないと引き出せない | もらった側が自分の判断で使える |
| 記録 | 口約束のみ・現金の手渡し | 贈与契約書があり、銀行振込で履歴が残る |
| 口座の作り方 | あげた側の印鑑・あげた側の住所で開設 | もらった側自身の印鑑・住所で開設 |
| 申告 | 110万円を超えた年も申告していない | 110万円を超えた年は贈与税を申告している |
気をつけたいのは、形だけ整えることが目的になってしまうケースです。贈与契約書を作っても、通帳と印鑑をあげた側が持ち続けていれば、実態は変わりません。大切なのは書類がそろっているかどうかではなく、もらった人が本当に自分の財産として持っている状態かどうかです。「渡したら使われてしまうから、通帳は自分が持っておきたい」という気持ちは自然なものですが、その状態を選ぶかぎり、名義預金と見られる可能性は残ります。
また、上の表を満たせば必ず名義預金にならない、と言い切れるものでもありません。判定は個別の事情の総合的な判断になるため、金額が大きい場合や毎年続けたい場合は、始める前に税理士・税務署に確認しておくと安心です。
出典: 国税庁「相続税の申告の誤りやすい事例⑥」/ タックスアンサー No.4402(贈与は当事者の合意で成立)・No.4429(贈与税の申告と納税)。取得日2026-07-23。具体的な進め方は生前贈与のやり方・贈与契約書の書き方もあわせてご覧ください。
税務署はどうやって名義預金を把握するのか
「そもそも調べられるものなのか」「黙っていればわからないのでは」と気になる方は多いと思います。先に立場をはっきりさせておくと、このページは見つからずに済ませる方法を説明するものではありません。ただ、「どう見られているのか」を知っておくことは、申告に入れ忘れがないかを自分で点検するのに役立ちます。
国税庁は、相続税の実地調査について「資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について実施した」と説明しています。無作為に選ばれるのではなく、手元の資料と申告内容を突き合わせて、合わないところから入っていくという考え方です。
令和6事務年度の公表資料では、相続税の実地調査は9,512件行われ、そのうち82.3%にあたる7,826件で申告漏れなどの非違が見つかっています。そして申告漏れを指摘された財産のうち、区分が特定されている財産では金額で最も大きいのは現金・預貯金等です(申告漏れ相続財産2,879億円のうち837億円・29.1%。最も構成比が大きいのは内訳が特定されない「その他」43.3%)。有価証券(13.6%)や土地(12.3%)よりも現金・預貯金が目立つ状態が続いており、名義預金はここに含まれます。
実務でよく語られるのは、収入と残高の釣り合いという見方です。収入がなかった、あるいは少なかった配偶者や、まだ働いていない子どもの名義に、その人の収入では説明のつかない残高がある場合、「そのお金はどこから来たのか」が問われます。逆に言えば、名義人自身の収入や、成立した贈与の履歴で説明がつく預金は、名義が家族であっても問題になりません。大切なのは隠すことではなく、説明できる状態にしておくことです。
そしてもう一つ、実際に多いのが相続人自身が名義預金の存在に気づいていないケースです。親が子ども名義で作った口座を、子どもが知らないまま相続を迎える。この場合、隠す意図はまったくないのに申告漏れになってしまいます。見つかるかどうかを心配するより先に、家族名義の口座を一度洗い出すほうが実益があります。調査全体の姿は相続税の税務調査——件数・追徴税額を国税庁の統計で解説で整理しています。
出典: 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月公表。実地調査9,512件・非違7,826件・非違割合82.3%、申告漏れ相続財産の構成比)。取得日2026-07-23。数値は全体の統計であり、個別のケースの結果を示すものではありません。
名義預金を相続財産に加えると、相続税はいくら増えるのか(概算)
「含めるべきなのはわかった。では、含めると税額はどれくらい変わるのか」——ここがいちばん知りたいところだと思います。当サイトの相続税計算エンジン(国税庁 No.4152・No.4155・No.4158 にもとづく概算)で、名義預金以外の遺産に名義預金を上乗せしたときの相続税額を計算しました。金額はすべて概算・目安です。
ケースA: 配偶者と子2人が相続する場合(基礎控除4,800万円)
| 名義預金以外の遺産 | 名義預金なし | +500万円 | +1,000万円 | +2,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 10万円 | 35万円 | 60万円 | 112万5,000円 |
| 8,000万円 | 175万円 | 206万2,500円 | 240万円 | 315万円 |
| 1億2,000万円 | 480万円 | 523万7,500円 | 567万5,000円 | 655万円 |
ケースB: 子2人だけが相続する場合(配偶者はすでに亡くなっている。基礎控除4,200万円)
| 名義預金以外の遺産 | 名義預金なし | +500万円 | +1,000万円 | +2,000万円 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 80万円 | 130万円 | 180万円 | 320万円 |
| 8,000万円 | 470万円 | 545万円 | 620万円 | 770万円 |
| 1億2,000万円 | 1,160万円 | 1,260万円 | 1,360万円 | 1,560万円 |
同じ1,000万円でも、増える税額は4倍ちがう
表を横ではなく縦に見ると、名義預金1,000万円が加わったときの増え方に大きな差があることがわかります。ケースA・遺産5,000万円では約50万円(10万円→60万円)の増加ですが、ケースB・遺産1億2,000万円では約200万円(1,160万円→1,360万円)です。相続税は課税される金額が大きいほど高い税率が使われるため、同じ金額の名義預金でも、もともとの遺産がいくらか、相続人が誰かによって効き方が変わります。「名義預金1,000万円ならだいたい◯◯万円」と一律に言えないのは、このためです。
配偶者がいると軽く見えるが、二次相続で戻ってくることがある
ケースAの増え方がケースBより小さいのは、配偶者の税額の軽減(国税庁 No.4158)が働いているためです。ただし、ここには続きがあります。配偶者が取得した名義預金は、その後は配偶者自身の財産になります。次に配偶者が亡くなったとき(二次相続)には、そのお金がふたたび相続税の対象になり、そのときには配偶者の税額軽減も、配偶者の分の基礎控除もありません。一次相続だけを見て「思ったより軽く済んだ」と考えると、二次相続で戻ってくることがあります(二次相続とは・一次と二次の合計で考える)。
いちばん影響が大きいのは「基礎控除以下だと思っていた家庭」
名義預金でもっとも影響が大きいのは、金額の大きい家庭ではなく、「うちは基礎控除以下だから相続税は関係ない」と考えていた家庭です。子2人だけが相続するケースで、名義預金以外の遺産が4,000万円なら、基礎控除4,200万円を下回るため相続税はかからず、申告も原則として不要です。ところが、ここに名義預金が加わると次のようになります。
| 子2人が相続・遺産4,000万円 | 名義預金なし | +500万円 | +1,000万円 |
|---|---|---|---|
| 課税価格の合計 | 4,000万円 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| 相続税の目安 | 0円 | 30万円 | 80万円 |
0円だったものが、名義預金の分だけで課税される側に移ります。金額そのものより、「かからないと思っていたので申告の準備をしていなかった」ことのほうが負担になりがちです。家族名義の口座に心当たりがあるなら、基礎控除ぎりぎりの家庭ほど、早めに洗い出しておく価値があります(基礎控除の考え方は相続税の基礎控除)。
前提: 遺産の総額は債務・葬式費用を差し引いた後の正味の金額、配偶者がいる場合は配偶者が法定相続分を取得すると仮定して配偶者の税額の軽減を反映、名義預金は全額が相続財産と認められた場合、小規模宅地等の特例や未成年者控除などの個別の控除は反映していません。金額は当サイトの計算エンジンによる概算であり、実際の税額は財産の評価・分け方・適用できる特例によって変わります。出典: 国税庁 タックスアンサー No.4152(相続税の計算)・No.4155(相続税の税率)・No.4158(配偶者の税額の軽減)。取得日2026-07-19。
やってはいけないこと——「隠す」「時効待ち」「使い切る」は逆効果
次のような対応は、名義預金を「解消」するものではなく、かえって不利になりかねません。
- 実質を隠して申告から外す — 後から相続財産と認められれば、本来の税金に加えて加算税などの対象になり得ます。
- 年数が経つのを待つ — 贈与が成立していない名義預金に「贈与税の時効」はあてはまらず、年数では相続財産でなくなりません。
- 相続前後に引き出して記録を消そうとする — 資金の動きは預金の入出金などからたどられることがあり、隠す行為は悪質と評価されるおそれがあります。
正しい方向は一貫して、実質に合わせて、記録を残して、正しく申告することです。生前なら実体のある贈与を、相続時なら相続財産として。判断に迷うときは専門家に相談してください。
本サイトは税負担を不当に逃れる方法や財産を隠す方法を説明するものではありません。出典: 国税庁「誤りやすい事例⑥」/ No.4429。取得日2026-07-23。
白黒がつかないとき——税理士に相談するという選択肢
名義預金にあたるかどうかは、①お金の出どころ(原資)・②誰が管理し運用していたか・③贈与が成立していたかを、口座ごと・時期ごとに突き合わせて判断します。同じ「子ども名義の預金」でも、通帳を誰が持っていたか、いつからいくら入っていたかで結論が変わるため、一般的な説明だけで割り切れないことがあります。とはいえ、上の①②③を口座ごとに書き出すと整理がつくケースも多く、その場合は相談まで進む必要はありません。
判断に迷ったまま申告してしまうより、事実を整理して専門家に確認するほうが確実です。相続税の税務相談・税務代理・申告書の作成は税理士が扱う分野で、地域や希望条件から税理士を探せる紹介サービスもあります。
【PR】以下は広告です。当サイトは、下記サービスを通じて税理士の紹介につながった場合に、広告主から報酬を受け取ることがあります。特定の事務所を推薦・順位づけするものではありません。
紹介サービスの利用条件・費用の有無は各サービスの説明をご確認ください。本サイトは特定の事務所の優劣を示すものではなく、個別の税務相談・申告書の作成には対応していません。財産を隠す方法や税負担を不当に逃れる方法を案内するものでもありません。
一次情報(出典)
出典(令和7年4月1日現在法令等。取得日は項目ごとに記載):
- 国税庁「相続税の申告の誤りやすい事例⑥(被相続人以外の名義の財産・預貯金)」(PDF) — 名義にかかわらず被相続人が資金を拠出したなど被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象(取得日2026-07-23)
- 国税庁 タックスアンサー No.4105(相続税がかかる財産) — 相続税の課税対象となる財産の範囲(取得日2026-07-23)
- 国税庁 タックスアンサー No.4402(贈与税がかかる場合) — 贈与は当事者の合意で成立、110万円以下は申告不要(取得日2026-07-23)
- 国税庁 タックスアンサー No.4429(贈与税の申告と納税) — 申告期限は翌年2月1日〜3月15日、期限後申告等の加算税(取得日2026-07-23)
- e-Gov法令検索「相続税法」第37条第1項(贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則) — 贈与税の更正決定等は申告書の提出期限から6年を経過する日まで(取得日2026-08-01)
- e-Gov法令検索「相続税法」第37条第4項 — 偽りその他不正の行為により贈与税を免れた場合の更正・決定等は7年を経過する日まで(取得日2026-08-01)
- 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」 — 実地調査9,512件・非違7,826件・非違割合82.3%、申告漏れ相続財産の構成比(令和7年12月公表。取得日2026-07-23)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152(相続税の計算) ・ No.4155(相続税の税率) ・ No.4158(配偶者の税額の軽減) — 本ページの税額の概算に使用(取得日2026-07-19)
よくある質問
- 名義預金に時効はありますか?一定の年数が経てば相続税の対象から外れますか?
- 外れません。「贈与税の時効」は、実際に贈与が成立している場合に問題になるものです。名義預金は、そもそも名義人への贈与が成立しておらず、実質的に亡くなった方の財産のままであるため、贈与税の時効という問題は生じません。口座を作ってから10年、20年が経っていても、実質が亡くなった方の財産であれば、相続のときに相続財産として相続税の対象になります。なお「贈与税の時効は6年」と言われるのは、税務署が課税処分をできる期間の制限(相続税法37条1項。偽りその他不正の行為があった場合は同条4項により7年)のことで、贈与が成立していることが前提の話です。
- 名義預金を正しく解消するにはどうすればよいですか?
- 名義を実質に合わせるのが基本です。方法は主に3つあります。(1)名義人へ実体のある生前贈与を成立させる=あげる人ともらう人が合意し、もらう人が通帳・印鑑を管理して自由に使える状態にし、贈与契約書や振込の記録を残す(年110万円を超えれば贈与税の申告)。(2)お金を出した人の口座へ戻す=名義預金を解約し、原資を出した人へ口座間の振替で戻して名義と実質のズレを消す。(3)実質どおり、亡くなった方の財産として相続財産に含めて相続税を申告する。(1)と(2)は生前にしかできません。いずれも記録を残すことが大切で、判断は税理士・税務署にご相談ください。
- 名義預金を使い切ってしまえば相続税はかかりませんか?
- 渡し方や使い方を変えても、それが実質的に亡くなった方の財産であるという事実は変わりません。本ページは税負担を不当に逃れる方法を説明するものではありません。名義人が生前に自分の判断で自由に使っていたのなら、そもそも名義預金ではなく名義人自身の財産だった可能性があります。一方、亡くなった方の管理のもとでお金を動かしただけなら、相続財産として扱われます。実際の取扱いは事情により異なるため、税理士・税務署にご確認ください。
- 名義預金を相続財産に含めずに申告したらどうなりますか?
- 実質的に亡くなった方の財産である名義預金を申告から外してしまうと、後から相続財産と認められた場合に、本来の相続税に加えて加算税などがかかることがあります。名義預金は相続税の申告で見落とされやすい財産として国税庁も注意を促しています。隠すのではなく、実質を正しく確認して申告に含めることが大切です。
- 名義預金は税務署にどうやって見つかるのですか?
- 国税庁は、相続税の実地調査を「資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等」について実施したと説明しています。令和6事務年度は実地調査9,512件のうち82.3%にあたる7,826件で申告漏れなどの非違が見つかり、申告漏れを指摘された財産のうち、区分が特定されている財産では金額で最も大きいのは現金・預貯金等でした(申告漏れ相続財産2,879億円のうち837億円・29.1%。最も構成比が大きいのは内訳が特定されない「その他」43.3%です。出典: 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」。取得日2026-07-23)。実務では、名義人自身の収入では説明のつかない残高がないか、といった見方をされます。ただし本ページは見つからずに済ませる方法を説明するものではありません。相続人自身が名義預金に気づいていないことも多いため、まず家族名義の口座を洗い出すことをおすすめします。
- 名義預金1,000万円が相続財産に加わると、相続税はいくら増えますか?
- 当サイトの計算エンジンによる概算では、配偶者と子2人が相続し、名義預金以外の遺産が5,000万円の場合、相続税の目安は10万円から60万円へ約50万円増えます。子2人だけが相続し、遺産が1億2,000万円の場合は1,160万円から1,360万円へ約200万円増えます。同じ1,000万円でも、もとの遺産額と相続人の構成で増え方は変わります。また、子2人だけが相続し遺産が4,000万円のケースでは、基礎控除4,200万円以下のため相続税は0円ですが、名義預金1,000万円が加わると目安80万円が生じます。いずれも概算・目安であり、実際の税額は財産の評価・分け方・適用できる特例によって変わります。
- 子ども名義の預金を親の口座に戻せば、名義預金は解消しますか?
- 原資を出した人の口座へ戻すことは、名義と実質のズレを消す方法の一つです。ただし、過去に有効な贈与が成立していた場合には、戻す行為が名義人から親への贈与と評価される可能性があるため、先にその預金が本当に名義預金なのか(原資・管理・贈与の成立)を整理する必要があります。また、戻したことで過去の事実が書き換わるわけではなく、相続の際には戻す前の期間も含めて「そのお金が誰のものだったか」が見られます。定期預金を中途で解約すると受け取れる利息が減ることもあります。動く前に税理士・税務署にご確認ください。
名義預金の意味や判定の詳細は名義預金とは・判定チェックリストで解説しています。正しい贈与のしかたは生前贈与のやり方、現金手渡しの注意点は現金手渡しの生前贈与は「ばれる」?、110万円の枠は非課税枠はいくらまで?をどうぞ。申告漏れがどのくらい指摘されているかは相続税の税務調査(件数・追徴税額)、配偶者が取得した後の負担は二次相続で確認できます。相続財産に含めた場合の税額の目安は相続税計算シミュレーション、贈与税額は贈与税の計算で確認できます。